suiwell様 凄絵
 ※注意※
 この作品はsuiwell様の作品に啓発されて書いたものです。
 上の<suiwell様>という項目を押すと別窓でサイトのトップにいけますので、そこからIMG→カミヨミ・おとなの中からHalloween記念の絵を先に御鑑賞下さい。
 その素晴らしさをお伝えすることが出来ないので、どうか、別窓を開いたまま見ながら以下の文章をお読みすることをお勧め致します。

 ・・・  女装/西洋/肉食1  ・・・ 


 「おい八俣。 はろいん を知っているか?」
一瞬だけ考えた後、日本の警察のトップに立つ八俣八雲警視総監は答えた。
「……さあ。どんな化け物かしら? うちは犯罪者しか相手にしないのよ」
「くくく。馬鹿め。これだから世相に疎い奴は困る。
 今、帝都で話題騒然の流行しているお祭りの名前だぞ」
いつになく陽気に人を馬鹿にてくる女に、一瞬殴ってやろうかと迷ったがやめた。話を聞いた後に殴っても悪くはない。
 単刀直入を重んじる彼女にしては、珍しい話の切り出し方だった。
 零武隊隊長、日明蘭は、今日は警視総監の部屋に入ってきたときからいつもと様子が異なっていた。嫌味を投げつけても聞き流すし、文句も揶揄も言わない。珍しいこともあるものだと思っていたら、仕事の話しが終わった最後の最後で爆弾を投下してきた。

 Halloweenがどこで流行するってのよ。今更。

 八俣は苦い思い出を味わいながら、心中つっこみをいれる。
 耳は広く流行の最先端をひた走るこの警視総監は十数年以上前からその風習については知っている。
 更に言えば、警察にハロウィーンの日には全員女服での出仕義務の導入を検討させたがそれは理解のない者たちの反対にあって失敗に終わった。日本の警察の威厳は勇気ある者の行動によって守られたのである。
 今、彼がわからなかったのには二つの理由があった。
 まず、外国語とは考えなかったからだ。目の女は、原産生息地域共に日本というような雰囲気がある。鎖国の時代は終わり、明治になって二十年以上過ぎ、異国文化が毎日流れ込んでくる世の中になったといっても、彼女に外国語は全く馴染じまなかった。
 そして二つ目の理由は。外国語とは思えないほど、彼女の発音は悪かった。
「Halloween……ハロウィーンって発音しない普通? それじゃ別の言葉よ」
「知っているならいい。十月三十一日、異人どもの館で披かれるはろいんに出席するのだ。いいだろう」
いいだろう。
 と、言われても、困るというものだ。眉を顰める。
「……それ、ただの自慢?」
「そうだ」
身もふたも理由も説明もなく言い切った。
 ソファに腰掛けて、蘭はもうさめてしまった茶をすする。
「それがなんなわけ? なに隠しているのよ。とっとと言いなさいっての」
ちろり、と片目でにらみながら探りを入れた。
 ふっ、と彼女の口が緩んだ。

「実はな。その夜会の護衛を零武隊に頼んできた。夜会の仮装衣装の服代が気前よく出たのだ。
 それで、ゆえに、だからっ!
 今から菊理と天馬に新しい西洋衣装を作らせるので人を呼んでいる」

あら。
 思わず八俣の声も上がってしまう。
 あの少年に可愛い服を着せる。しかも西洋式の。
 蘭の給料では 使い込みが激しいので 高が知れているが、成金から金が出るとなれば相当なものが作れるだろう。しかもハロウィーンの仮装となれば素敵で可愛らしい服を作るに違いない。
 どんな服がいいだろう。
 狼男? それともマミー? ジャック? 魔女の従者なんてのもいいわっ!
「私も一緒に選びたい!」
気づいたら桃色の声を上げていた。もう殆ど本能の域だ。
「それに。西洋服にはちょっと煩いんだから。色々教えてあげられるわ」
さらさらと八俣は手にあった紙に天馬の衣装を描く。
 ほう、と蘭は声を上げた。
 なかなか言うだけあって上手い。
「では一緒に来い。夕飯は馳走してやる」
「……あたしが払うわよ。じゃ、用意するから待ってね」
年下の蘭におごられるのは真っ平御免だ。
 受話器に手を伸ばして、早退することを部下に告げた。