|
||
新暦の七月七日。 「おー。天馬ぁ、旨そうな寿司やないか。酒もきちんと購うてきたでー」 「鯖寿司を取り寄せるとは犬にしてはなかなか筋がいいな。 しかも去年よりもきちんと量が多い」 「この時期はあたるからなかなか手に入れるのが大変なんだぞ。 母上、どうぞお席にお戻りください。 二人とも、短冊は?」 もう渡したと、瑠璃男は蘭の方を指差す。 残念ながら今夜は大雨だったが、四人が集まって酒盛りに突入すれば涼しいくらいが丁度よい。 蘭は二人の持ってきた短冊を上のほうへ吊るした。 ひらひらと、色とりどりの短冊が笹に飾り付けられていて舞う。 天馬の横に、彼女が座る。 「……お前も、たいがい、頑固者だな」 ぼそりと、息子にだけ聞こえるように低い声で囁いた。 「誰かさんに似ましたからね」 面白くない返答に蘭が思わず振り向くと、天馬は満面の笑みを浮かべて待っていた。 |
||
|