・・・  七夕 3  ・・・ 


 新暦の七月七日。
「おー。天馬ぁ、旨そうな寿司やないか。酒もきちんと購うてきたでー」
「鯖寿司を取り寄せるとは犬にしてはなかなか筋がいいな。
 しかも去年よりもきちんと量が多い」
「この時期はあたるからなかなか手に入れるのが大変なんだぞ。
 母上、どうぞお席にお戻りください。
 二人とも、短冊は?」
もう渡したと、瑠璃男は蘭の方を指差す。
 残念ながら今夜は大雨だったが、四人が集まって酒盛りに突入すれば涼しいくらいが丁度よい。
 蘭は二人の持ってきた短冊を上のほうへ吊るした。
 ひらひらと、色とりどりの短冊が笹に飾り付けられていて舞う。
 天馬の横に、彼女が座る。
「……お前も、たいがい、頑固者だな」
ぼそりと、息子にだけ聞こえるように低い声で囁いた。
「誰かさんに似ましたからね」
面白くない返答に蘭が思わず振り向くと、天馬は満面の笑みを浮かべて待っていた。