メイドさん 3   
26/06/2006


 日明家のメイドガイねたがなぜか頭からこびりついて離れない。
 てなわけでとうとう3まで書きました。触手の話にしようかとも思ったんですが、梅雨晴れのよき日にそれもどうよなツッコミが入るのでさわやかメイドねた。

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 なんだかんだでなんとか追試を乗り越えた大佐は、とうとう英語の楽しさに目覚めます。
 丸木戸パパの研究室に忍び込み(丸木戸を脅して)、時間がたつと消えるインクを奪って帰ります。
 翌日、日明家は大混乱。
 畳から床から廊下から、すべてに英語の単語が書いてある。

 メイドガイのエプロンには「MEIDOGAY`S apron」(ガイはGUY)
 歯ブラシやコップにも、「RAN'S tooTHbrUSH」「RAN'S CUP」
 犬にはDOG、壁にはWALL。

 微妙に単語がミスっているのも気にせず、一人三時くらいから筆とインクと辞書を片手に一生懸命大佐が書いているわけです。勿論メイドガイは主人の呆れた所業を辞めさせるのも仕事のうちですから、深夜から馬鹿にテンションが上がりきった蘭さんと一戦交えて眠らせます。
 唯一軍服には落書きはしなかったものの、靴下や靴にはしっかりかいているわけで、それを見た同僚達はあまりの微笑ましさに誰もツコッメません。(同僚は蘭さんの英語嫌いを知っています)

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 まあその落書きは『いくら消えるインクでも困りますから』という一般メイドたちの進言によって即日廃止令が出され、結局残りのインクは黒木中将のインク壷の中身とすりかえてしまいます。
 それはさておき、膨れた大佐はまた新たな英語で遊ぼう!を思いつく。

「今日から日明家は英語で話すぞ! 日本語は禁止だっ!
 文明開化だからな」

と宣言いたします。
 メイドや乳母は普通の人、きっと英語が使えず右往左往するだろうという嫌がらせ的根性から出た言葉です。
 で、その夜。『Never speak in Japanese. Speak in English in Hiaki's house!』と書いた紙を張り出します。メイドガイはその思いつきにつっこみをいれるよりも、大佐がJAPANESEの前にINが書けたことに驚いてぐうの音も出ません。
 そういうわけで次の朝から日明家では英語となりますが。
 メイドさんたちは英語、ぺらぺらなんです。メイド学校がそもそも英国にあるとかで、皆留学生(どこの素敵メイドだ)。
 乳母も英語が堪能。実は若い頃イギリスの男と付き合っていたのです。
 メイドガイは言わずもがな。
 ―――結局、大佐一人話しに加わることができず、また「ご飯が食べたい」とか「風呂は入っていいのか?」とか日常会話すら出来ないので、いきなり日明家での立場が大ピンチになります。
 誰も大佐の面倒を見てくれないどころか、飲んで家に帰ってきた日には家に入れてもらえない始末です。
 まあかなり苛めた後で、メイドたち+乳母がしょぼくれる蘭さんをそっと慰めてあげる。そして、

「まあ、このような悪戯はもうおやめ下さいよ。それにしても、この張り紙、ひとつもスペル間違っておりませんよ」
「蘭様がとうとうNEVERを使いこなせると知ったとき、嬉しゅうございましたわ」
「英語、がんばって下さいね」

と次々に慰めと褒め言葉をもらいます。

 *****

 ええっと色々試しているわけですが、やはり根本的な英語レベルはいまだ壊滅的で、五文字以上の単語になるとどうしてもスペルミスをしまくるし、AとANの区別はつかないし、追試常連になっています。
 英語講師は優しく教えて色々フォローをしているのですが、やはり結果は悲惨。
 蘭さんの英語の月末テストの結果が、黒木中将に送られて、直々に注意を喰らいます。

「お主の剣術や戦術の腕は認めるっ。
 だがそうだといって、勉学を放棄するのは軍人としてあるまじき行為だっ!
 真面目に授業を受けろっ! わかったなっ」

 後頭部を花崗岩で殴られたくらいのショックで、思わず大佐が立ち竦んでいるところに―――
 同僚達が直談判に登場!

「黒木中将っ。その結果を見てその結論を得るお考えは理解できますが、実はこの日明大佐が一番頑張っているのです。信じられませんがっ!」
「月末のテスト結果だけで日明大佐の努力を見てはいけませんっ。
 もう涙ぐましい努力で、むしろ英語やめさせてあげようよという気持ちになるくらいですからっ」
「もう六ヶ月英語と格闘していて、そして家でも塾でも人一倍頑張っているのにこれだけできないと、思考回路の根本から駄目だと思うんですっ。
 どうか怒らないで下さいっ」
「四六時中英語辞書を持ち歩いているんですよっ。
 でも駄目なんですよっ!」

と。フォローになっていないような言葉ですが、その瞬間どさっと大佐のポケットから辞書が落ちて黒木中将も言葉につまります。
「…………コホン。じゃあ……。
 じゃあ、一つおぬしの努力の後とやらを、見せてもらおうか」
黒木中将も鬼ではないし、一応可愛い(予算のかからない優秀な)部下なので、試験を課すことで話がつきます。
「今から、思いつく英単語を二十個書いてもらおう。名詞が五個、動詞が十個、副詞と形容詞をあわせて五個だ」
「…………めいし?」
「……………………すまん。忘れてくれ。何でもよいから二十個書いてくれ」
出来上がった『うわぁ』な答案を、流石の黒木さんでもどう判断したらよいのか困ります。
 六ヶ月英語をやった人間とは思えない『うわぁ』さで、色々迷った挙句、蘭さんの肩をぽんぽんと叩いて立ち去っていきます。

 *****

 英語に対して個人的な恨みはないんですが、入試は英語なしで漢文で受けられる大学を探してみたけれどありませんでした。
 うーむ。漢文は楽しいんだけどなー。

 そんなこんなでメイドネタでした。



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