* 神隠し *






 毒丸が、一人で大佐の執務室にやってきた。
 彼女は今鞍馬に出ている。誰もいない。本来なら彼も行かねばならないが、鉄男に頼んで汽車を遅らせた。
 彼女の執務室の左奥に、本棚がある。
「……ここだ」
生唾を、ごくりと飲んだ。
 震える手でそこを開ける。鍵は、かかっていなかった。
 さまざまな書類の下に、一番下の段に、予備の白い軍服が丁寧にたたまれていた。
 服の一番上にある帽子を取り上げて、上下左右に回転させながらまじまじと見つめる。
「普通の軍帽っぽいけれど……。
 どうしてこの帽子に、あの髪が入るんだよぉ。無理だよなぁ。
 何の仕掛けが……」

 その日。
 一人の隊員が消えた。

  大佐の帽子が髪が入る理由はわかりません。激と炎も、帽子に入るんだろうか。いや無理だろう。絶対。実はあの帽子は教授の作品で、大霊砲もあそこに入れて運んできている、といわれると非常にしっくりきます。




* ヒヒイロカネ *






 「たーいさー。
 ヒヒイロカネですよ。ヒヒイロカネっ。本物みちゃいましたよ、僕。
 だってヒヒイロカネってたら、古事記にだってあれじゃないですかっ。
 くぅぅぅ、すごい。
 あ。お父さんにも連絡しとかなきゃ。電話電話……と。
 あ、まだ片付けちゃ駄目ですよ。駄目ですからねっ」
「………………丸木戸君。
 君は本当に死にたいようだな」

  スキップしながら電話に向かう可愛い教授を腹が切れても刀をもって追いかける大佐。
 二人の間には愛がある。
 …………たぶん。





* 二振りの神剣 *






 「あら。さすが海の底にいただけあって汚いわねぇ。
 足の隅にあるのもしかしてフ・ジ・ツ・ボぉ?」
「ああ?
 おめえこそ空気に触れてすっかり酸化中じゃねえかよ。
 みすぼらしいマダラだなぁ」
「馬鹿ね。
 これ最近流行の豹柄よ。それにあたし、封印解けば綺麗だしぃ」
「俺だって封印とけば……」
「あんたのが……綺麗?
 はっ。今の状態のあたしにだって勝てないわよ。このフジツボ剣」
「なんだとぉぉっ!
 口が悪くなったなぁオイっ」
「何よっ。
 家勝手に出てっ。
 反省して、頭下げながら海中の金集めて指輪二個三個持ってくるのが筋じゃなのー!? あんたの高慢な態度が許せないのよっ!」

  神剣会話中。
 つうかおまえらはいろいろと反省しろよっ。特に月輪っ!





* 零武隊     2巻 − 124頁より *






 「警備兵全員の遺体検分終わりましたよ。
 五名とも即死! 銃を撃った形跡すらなく瞬殺でやられてますね
「そうか……
 68人殺しと同一犯と考えて間違いないか?」
「まあ、この村に宮本武蔵でもいない限りそうでしょうね」
「今すぐ赤間関署に伝令を飛ばせ」
「はっ!」

「宮本武蔵がいるからサイン用の色紙百枚と上質な和紙、水墨画用の墨一式用意して至急運んで来い。
 最高級品を選べ。値段に糸目をつけるなと伝えろ!」

「はっ」
「待ったぁぁぁぁぁ―――っ!」

  丸木戸君がいなかったら危うく大変な伝令が飛んでいるところでした。大佐は宮本武蔵の大ファンです、という設定を勝手に捏造。




* 鞍馬山     3巻 − 30頁より *






 その部屋には、四人の中将、雄山元帥、そして日明大佐が集まっていた。
 一つの机を囲んで少し殺気立っている男たちを前に、にやり、と蘭が微笑みながら写真をとりだして全員の前にちらりと取り出した。
「まぁ……
 処刑の手間は省けたようですけどね……」
「なっ……なんだこの写真は!」
「こ……これは陸軍の軍服じゃないかっ!!」
次々に男たちが驚愕の表情を見せる。
「三木平助……
 京都の鞍馬山で発見されました
 遺体は杉の木の上で18米の所に突き刺さっていた」
「18米!?」

『この写真の角度……一体どうやってそんな高いところを撮れるんだっ!』

「私がジャンプして撮ったがそれが何か?」

脇をきゅっと締めたからな、手ぶれせんですんだわ。
 と彼女が言っているのは誰も聞いてない。
 こそこそと全員が話し合っている。
「なんだ?」
その違和感に彼女が気づいた。
「……自首しなさい。日明くん」
「……まったく。予算使い込みだけでなく軍人殺しまで……」
「いいから儂のところの葉山は返せ」
「ほーんと。零武隊の事件って迷惑ばかりですねー」

「わ、私はやってないっ!」

『嘘つけ』

  大佐は皆のアイドル。